一般的に、生活科学教育は食品・住居・福祉など細分化された様々な生活要素に関する専門職を学科別に育成することに力点が置かれ、ひいては各専門職も自らの職域の活動にとどまってきた。しかしながら、地域社会に目を向けると、複合的な問題が多数発生しており、それらは個別の生活要素に還元するだけでは、生活者のQOL(生活の質)は向上しない。このように現在の成熟社会では生活問題は複合化しており、個別専門職のみでは人々のQOLを向上させるには限界がある、という状況の下、本コースは、生活者のQOLニーズを俯瞰的に把握・分析するニーズアセスメント能力やコーディネーション能力を有し、パートナーシップによる問題解決を図ることのできるQOLプロモーターを養成することを目的としている。
本取り組みは、平成17年に文部科学省の「現代的教育ニーズ取り組み支援プログラム(現代GP)」に「QOLプロモーター育成による地域活性化」というプログラムで採択され、その後大学独自の取り組みとして継続している。
本コースでは地域ニーズの把握から問題解決を、地域とのパートナーシップのもとに行うことを教育の特徴とし、いくつかの自治体と協力しながら実践的な演習を行っている。そのカリキュラムは以下の枠組みで行われている。
1.まず、その基礎として、複合化する問題に対応するため、所属学科以外の学科の教育を受け、基礎的知識を得る(関連科目)。
2.さらに、「QOLプロモーションⅠ・Ⅱ」では、生活問題を抽出・分析し、他専門職等とのパートナーシップを築きながら、諸種の生活問題を協働して解決していく能力と技術を理論的に理解する。そのため、科目「I」ではQOLの考え方に、「II」ではニーズアセスメントやコーディネーションといった方法に焦点を当て、問題解決の方法・スキルを修得する。
3.その上で実践的演習として、「QOLプロモーション演習I・II」を行う。これらは実際に地域に出て、食や栄養、住環境、介助などの生活支援を一体的に体感させ、パートナーシップによる問題解決能力を修得させる。これらの科目は、地域の住民や専門職も受け入れ、本学の学生と共に学ぶ場をつくり、各学科学生、地域住民、専門職といった枠を超えたチームを編成した上で、生活全体を理解するための複眼的な視点と問題解決のための多面的なアプローチを修得する。
これらの教育を行うことで、マルチプレックスな視点をもつ人材養成を行っている。
その他にも様々な地域との連携した実践活動を行ってきている。